R&C

ラム&コーク

ラム&コーク

かっこいい!
疾走感を求めて読み始めたらこれまたぴったり!
気分にあった小説を選べるようになってきました。


私はもう27才なのに未だに少女漫画を読みますが、
そのくせ読む小説はギャングものが多いという、
自分でも訳の分からない好みをしています。
(少年漫画は得意じゃないので、基本的にギャング漫画も苦手。
その逆?で、少女漫画が好きなので、恋愛小説はあまり読みません)
思えば、書店に行けば、
男性作家・女性作家の棚がわけられていれば男性作家の棚の前に、
さらにミステリーの棚があればその前に立っていることが多いです。
私の中では、ミステリーは、警察もしくは探偵が出てくるイメージで、
ギャング小説のジャンルはエンタテインメントだと思ってるけど。
ギャングの棚や、青春の棚があれば、
きっとそこから動かないことでしょう・・。


そんな訳で、こないだ友だちから、
おもしろい本あったら貸して、と言われた時も、
とっさに思い浮かんだのはギャング小説だったのですが、
なんとなく薦めることができず、劇団ひとりを貸してみました。
5年前くらいまでは全く読書をしなかったので、
自分の経験でもあるのだけど、あまり読書をしない人が言うおもしろい本って、
泣けたり感動できたり心温まったりするわかりやすいものなのかなあと思うのです。
私はギャング小説にもそれはあると思うけど、
あまりとっつきいいものではないので、
あえて人に貸すには躊躇してしまうのですね。
男の子なら別にいいけど、女の子にはなかなか。


でも、妹の友だちの中に一人、
女の子だけど私と趣味が似ているギャング小説OKの子がいて、
その子には普段は躊躇するような本でもどんどん貸して、
おもしろかったとか、おもしろくなかったとか、読まなかった(!)とか、
どういう感想を言われようと楽しいのだけど、
久々に「あの子にこの本貸したい!」と思った本が、
この「ラム&コーク」でした。
このタイトルがまたいいよね・・!
R&Cがレイ&クリスまでは「あ〜なるほど」くらいだったけど、
レイ&ショコラ、レイ&チャイニーズとなってくると、
もうなんかたまらなく嬉しくなりました。(変態的)


初版のまだ平積みされている頃に購入しているのに、
1年半たった今になってようやく読んだというのも、
私はそういう時差みたいなものが及ぼす作用を信じているので、
今回もそれが働いて、数倍おもしろく読めたんじゃないかなあと思いました。
自分の中にそれぞれの本を読むベストの時期があるって思っているのです。
その時期がずれるとおもしろくなかったりすることもあるし、
後になって読み返すとむちゃくちゃおもしろかったり、その逆があったり。
それはたぶん自分の精神状態や経験なんかも影響してるけど、
大げさに言えば「運命」も影響しているかもしれないなあと思うのです。


例えば、この本の舞台は福岡で、
知ってる道や駅、街が出てくるのだけど、
それってこの本を買った1年半前よりも今の方が理解しています。
今なら明治通のスタバの前を通った後に、
西鉄グランドホテルの前の交差点を右折し、
昭和通に出て渡辺通をまた右折、
再び明治通に戻ってバス停の側のスタバへ戻る、
という景色を簡単に思い浮かべることができるし、
ドームを見下ろすホテルも、地下街も、
二見ヶ浦も、福岡空港も、すごく身近な存在だったりします。
それだけでこの本にリアリティが増して、
2倍も3倍もおもしろくなるのです。
そういう巡り合わせが私にとっては運命的にも思えて。
それがバシっと決まりました。


もちろん内容もおもしろい。
この著者の書くギャングの哲学って、
小説の中の出来事だとわりきって読めば、
痛快で、かっこいいんですよね〜。
実際にあんな人たちがあそこのスタバにいたら怖いけど!
かっこいいとか言ってられないけど!
あくまで、作り物の世界だから好きなんです。


話に出てくるのは日本人と中国人と台湾人なんだけど、
「シニカルでクールなクライムノベル」
と英語を使ってちょっとかっこつけて説明したい感じのストーリーです。
なってほしいようになる結末なのに、
先が読めて残念だとは思わない展開で、しかも清々しいし、
ところどころ少し気が抜けていてなんだか可愛いエピソードもある。
主人公の日本人が、中国人からは、
冷酷で強い極道の男みたいに思われているけど、
実際は子供っぽくて不器用で墓石を扱う会社の息子で、
周りの大人たちからはいつもからかわれる対象になっているという、
その二面性と同じように、
残酷なバイオレンスシーンなんかの悪い余韻を、
ジブリが好きな中国人とか、
ジブリを観て泣くヒットマンとか、
そういったくすっと笑えるシーンで中和していました。


この著者の本で読んでいないのは、
あとは「ワイルド・サイドを歩け」だけなのですが、
早速明日にでも購入してこようと思います。
明日は伊坂幸太郎の新刊が発売になるし楽しみです!