燃えるハート

おっと。本読んだんだった。
忘れないうちに感想を。

蜻蛉日記をご一緒に (講談社文庫)

蜻蛉日記をご一緒に (講談社文庫)

まあ平安ブームなので、このあたりを。
蜻蛉日記は難解なことで有名らしいので、
田辺聖子さんの講演をおこしてまとめたもの、
という形式のこの本を読むことにしました。


この蜻蛉さんという人は、
この時代に合わない考え方の持ち主で、
一夫多妻制が認められているから言ってもしょうがないのに、
夫が自分の家に寄りつかないと常に嘆いたり怒ったりしている、
けっこう鬱々とした人物で、不器用このうえない人です。
そういう人の書いた、結婚生活の日記が、この蜻蛉日記です。


彼女はせっかく夫に優しくされてもつっぱねてしまいます。
徹底的に夫につっかかる様子というのは、
見ていて冷や冷やするし、
夫が可哀想でどうしても好きにはなれないのだけど、
かえってそういう、うまくできないところに共感している私もいたりして。
同族嫌悪かもしれません・・!


脳みそと心で別の行動をとってしまうことって、よくあります。
たいてい脳みそが心に指令を出すとうまくいきません。
思うままにすれば、いいふうに転がったりするものだし、
その方が自分も楽だったりします。
それをプライドとか世間体とかモラルとかが邪魔するんだよね。
だから蜻蛉さんの気持ちがとてもよくわかってしまいます。
そういう現代の感覚で読んでも古びていない感情が新鮮で、
結局は夢中になって読みました。


しかもこの本では、蜻蛉日記の内容にとどまらず、
この時代の生活や政治の話など、どのように人々が生きていたか、
そういったことまで言及してくれているので、
古典になじみのない人でも入門書として十分楽しめる内容だと思います。
少しなじんだ私もすごく楽しめたし。
何より、講演の書き起こしなので、
口語で書かれているからすんなりと頭に入ってきます。とても読みやすい。
作品の内容は決して明るいものではないと思うけど、
田辺さんのあっけらかんとした語りが、
蜻蛉の鬱陶しさというのを和らげていたようにも思えます。
物語の内容にちなんで、源氏物語などの他の古典の名作からの引用も多々あったし、
ここから古典文学に目覚めるという人もいるかもしれません。
私も火がつきました。