ギャングスタ・ノヴェル!


ただ今ちょっとした東山中毒にかかっておりまして、
もう著作物全部読んでしまったので、
早くも次の本はいつ出るのかとジリジリしてます。
登場人物のかっこよさ、かわいさ、なさけなさ、どうしようもなさ、
そういうのが癖になります。
また逃亡作法とか読み直そうかなあ。

ワイルド・サイドを歩け ~『このミス』大賞・シリーズ

ワイルド・サイドを歩け ~『このミス』大賞・シリーズ

あいかわらずギャングとか怖いお兄さんがわらわら出てきて、
今回は男娼が出てきて、薬の売人が出てきて、
やっぱりみんながみんな喧嘩したり殺したり、
あからさまな犯罪行為で怒ったり笑ったり泣いたりして、
さらには下品なこと言ったりしたりして、
そうかと思えば必死だったり軽やかだったり、
どう考えても女子の読み物ではないと思うんだけど、
それでも私は好きでした。


そもそも、この著者の作品が好きなのは、
他の小説と比べて圧倒的なリアリティを感じられるから。
それは福岡が舞台であるところが大きいです。
通ったことのある道と、生活とともにある道とでは、
リアリティが全く違っていて、
文章から自然と思い描ける道はもちろん、
何の感慨もなく過ぎているような日々の風景も、
そっくりそのまま小説の中に出てくるのが、心地よく思えます。
自分の思い入れまでも本の中に感じてしまうからでしょうか。
本文中に出てくる道を、私は何度走ったか。


そうだとすれば、たぶん私にとっては、
千葉の中山競馬場近辺や、船橋津田沼あたりが舞台でも、
心地よい物語になるはずでしょう。
競馬場は入ったことはなかったけど、
その近くに住んでいたので、
あのあたりの道はよく通りました。
木下とか14号とか、走りたいな〜。


話は戻りまして、
そういう意味での特別な思い入れのほかにも、
人物たちの憎めなさというものにも惹かれてしまいます。
どう考えても犯罪者たちの話で、
憎めないとか言ってるレベルじゃないのに、
いつもなぜか微笑ましく読んでいるような節があります。
フィクションだからこそそんなことが言えるのだけど、
がたいが良くて喧嘩の強い高校生が、
運転すると几帳面だったり、
友人を「ちゃん」付けのあだ名で呼んでいたり、
小さいとはいえ伊沢組の組長である男が、
ディスカバリーチャンネルのドキュメントで泣いたり、
天涯孤独の男の子を不憫に思ったりする、
可愛らしいとさえ思ってしまうギャップに騙されて、
妙なリアリティを感じてしまうのです。
ギャングの一人がユーリ・アルバチャコフに似ているとか!
目が細いという描写を見る度に笑えました。


もちろんスリルに打ち震えてる瞬間もあるにはあるし、
あまりに非道な行為に気分が悪くなることもありました。
でも、我ながら間違った感想だとは思うけど、
読後なぜか胸が暖かくなる気がするのです。
それは著者の視点が絶対的に等しいからだと思います。
作品云々ではなく、私はその目線が好きなんだと思います。


もちろん、作品そのものもおもしろいです。
ギャング小説が好きな人であれば、
疾走感あふれるエンターテイメント小説、
ただそれだけの認識でも十分に楽しめるはずです。
ギャング小説として読んでも、青春小説として読んでも楽しめる。
読み終えた後、爽快感にひたれること間違いなしです。
音楽も勝手に流れ出す。
映像化してもすごくおもしろいと思うなあ。
IWGPみたいな!


ただ、普通の女の子が読んでおもしろいと感じるかどうかは、
私にはわかりかねますのでご注意くださいませ。
(そもそもなぜ自分がギャング小説好きなのかもわからない私です)